参議院本会議

宮崎県で発生した口蹄疫に関する報告に対する代表質問
平成22年5月26日(水)
■松下新平■

  イギリスで二〇〇一年に口蹄疫が猛威を振るいました。その被害は、感染施設数二千三十、殺処分された家畜は六百万頭を超え、損害額は日本円で一兆円にも達しました。終息の後、翌年、この事例を分析した調査報告書には次のように記されています。政府の危機管理の失敗と、初動の対応の遅れやワクチン接種を見送ったことが挙げられています。
  議場の皆さん、国民の皆さん、このイギリスでの教訓を心に留めてお聞きいただきますようにお願い申し上げます。
  自由民主党を代表して、ただいま報告のありました宮崎県で発生した口蹄疫に関し、質問いたします。
  手塩に掛けて育ててきた家族同然の家畜を何の落ち度もないのに処分させられた農家の皆さん、今日は大丈夫か、今日は大丈夫かとおびえながら必死の防疫を取られている農家の皆さん、この間、この時間も必死に殺処分や埋却、消毒など一連の作業に従事されている方々など、関係すべての皆さんのお顔を思い浮かべながら、農家出身の一人としてもただしてまいります。
  なお、答弁が不明確、不十分である場合には、再質問、再々質問を行う考えがあることをあらかじめ申し上げます。
  我が国でも、十年前に宮崎、北海道で口蹄疫が発生いたしました。実に、前回発生から九十二年を経ての発生でした。宮崎、北海道で起きているのではない、日本で起きているんだ、これは当時の自由民主党総合農政調査会最高顧問の江藤隆美先生が関係者に呼びかけられた言葉です。
  九十二年たってですから、だれも経験がないわけです。現場は経験がない中でしたが、必死の防疫で協力しました。私も地元の県議会議員として対処しておりましたので、鮮明に覚えております。まさにこの言葉どおりに、日本全体の防疫の観点から、政治のリーダーシップによって、発生直後、即座に予備費を含め百三十億を確保し、様々な施策を次々に打ち出し、最小限にとどめることに成功したのでございます。
  OIEは、この早期の終息に世界に例を見ないと絶賛し、我が国の獣医学、家畜衛生は高い評価をいただいたのでございます。もちろん、今回の発生ケースと様々な状況の違いはございますが、肝心なのは、リーダーの認識、心構えが重要だということです。
  家畜伝染病への対処は、イギリスの教訓のとおり、時間との勝負です。初動が決定的に重要であり、最悪のケースを想定して行うのが危機管理のイロハでございます。当時、江藤隆美先生も宮崎の選出ということで奮闘したこともあったでしょうが、それよりも増して、大所高所から日本の防疫の認識、重要性による取組が功を奏したのだと考えます。これは宮崎、北海道で起きているのではない、日本で起きているんだ、この認識を改めて共有したいと思います。
  そこで、昨日、非常に看過できない閣僚の発言がありましたので、まず最初に防疫対策の本部長として鳩山総理の答弁を求めます。
  その発言とは、中井洽国家公安委員長の昨日の閣議後の会見での発言です。口蹄疫が広がっているこの問題に関して、隔離したエース級種牛六頭のうち一頭が感染の疑いで殺処分されたことについて、中井大臣は、信じられないような隔離の仕方、同じトラックで運ぶとか、同じ牛舎に入れていたとかと述べたとされています。宮崎県の東国原英夫知事がエース級以外の種牛四十九頭の延命を求めたことについては、中井大臣は、六頭の隔離のやり方を失敗したから、残りを何とかというのはちょっと違うと批判されましたと報道しました。
  これは全くお門違いです。そもそも、初動がきちんとされていれば、このような事態にならなかったのです。本末転倒です。鳩山総理を本部長とする防疫対策本部が設置され、中井大臣はこのメンバーでもあり、このメンバーの発言ですから看過できません。
  さらに、会見では、米軍普天間飛行場の移設問題に関連し、社民党の福島みずほ党首の言動について質問された際、福島党首が宮崎の御出身と述べた上で、宮崎の人というのは口蹄疫の対策でも頑固なところがあるから、赤松さんも苦労していると発言したと報道されました。
  私は耳を疑いました。今、苦しい、厳しい宮崎県、宮崎県民の置かれている状況に何と卑劣な発言でしょうか。もちろん、宮崎出身だから悔しいといった次元ではなくて、対策本部のメンバーである大臣として全くなっておりません。そのような認識で危機管理ができますか。それが生活第一を掲げる政党ですか。一事が万事です。中井大臣のこの発言に対して、防疫対策本部長として、鳩山総理、即刻罷免してください。
 四月二十日の疑似患畜確認から今日で一か月と六日になります。既に関係者の体力、気力共に限界に達する中、更に大量の未患畜の牛、豚までも手に掛けなければならない、このことがどんなにつらいことか、総理、分かりますか。また、関係者の皆様が今後の生活にどんな不安を感じておられるか想像できますか。
  殺処分された牛や豚について、個別の家畜の価格に見合った時価評価方式で全額補償することなどが宮崎県と合意されています。しかし、これは最低限の補償であります。鳩山総理、農家を始めとする感染地域の方々は、この瞬間も口蹄疫と闘っておられ、毎日が不安でなりません。感染を一刻も早く止めると同時に、現在の合意から一歩も後退することなく万全の補償を実施されることをこの場でお約束願います。
  さらに、地元の試算を勘案しますと、現状復帰には一千億円、一千五百億円を超える予算が必要と言われております。総理は、昨日の衆議院本会議で古川代議士の質問に対して、やり過ぎたと言われるほどやりますと答弁されました。有り難いことです。それでは、具体的にやり過ぎだと言われるほどとは補償にどれぐらいの予算が必要と考えるのか、併せてお答えください。総理、沖縄普天間基地の移設先が座礁してしまったように、努力したけれども、頑張ったけれどもできませんでは話になりませんよ。
  今回の発生に当たって、こんなにも感染が拡大し三十万頭以上の殺処分に及んでしまったのはなぜでしょうか。それは、政府の危機意識が余りに低く、初動が遅れ、感染封じ込めに失敗したことにほかなりません。標榜する政治主導が泣きます。政務三役がかえって足かせになりました。山火事で例えれば、火が蔓延してから消防団が出動するようなものです。
  私の五月十三日の参院農林水産委員会での質問に対して、赤松大臣は、口蹄疫自体の報告を受けたのは第一例目確認の前日の四月十九日とおっしゃいました。あれだけ韓国などで猛威を振るっていたにもかかわらず、遅過ぎます。
  自民党政権下での対応を紹介しましたが、私どもは、当時の経験を生かし、発生後直ちに党内に対策本部を立ち上げました。そして、発生翌日には我が党の宮腰農林部会長と地元議員が、四月二十八日には本部長である谷垣総裁も現地入りし、農家の方々の声を直接伺った上で、計三回にわたり政府に具体策を申し入れてきました。感染拡大防止のため防疫対策を徹底すること、このようなきめ細かい要求をいたしました。
  しかし、その時点で、鳩山総理、赤松大臣に危機意識は全く希薄でした。特に赤松大臣は、我が党が、先ほど申し上げましたように、谷垣総裁の視察結果を踏まえ、万全の対策を申し入れたまさにその日、外遊に出かけました。四月三十日から五月八日まで、メキシコ、キューバ、コロンビアへ外遊に出かけました。赤松大臣はよく農林水産委員会の答弁で、今ごろでは駄目だ、私に前もってなぜ言わなかったのかとおっしゃいますが、我々は、この非常事態に大臣が国を離れる場合ではないと外遊の取りやめを前もって要請しておりました。それを振り切っての外遊でした。
  畜産農家の皆さんが苦しんでいる真っただ中、九日間にもわたって外遊に出かけられた目的は何でしょうか、そして成果はどのようなものでしょうか。農水省はEPAに関するものと説明されていますが、訪問先の一つであるメキシコとは二〇〇五年に既にEPAが発効済みであります。口蹄疫発生の最中、どうしても行かなくてはならなかったんでしょうか。赤松大臣、被災された畜産農家の皆さんが納得する答弁をしてください。
  また、鳩山総理は、赤松大臣が口蹄疫対策より優先された外遊は適切な対応だったと考えておられるのですか。いかがですか。また、先ほど、赤松大臣が今回の口蹄疫の説明を受けたのが発生確認の前日ということを余りにも遅過ぎると指摘しましたが、鳩山総理自身がこの口蹄疫について認識されたのはいつの時点ですか。併せてお答えください。
  我が党は、蔓延する状況に苦渋の政治判断をすべきと、五月六日に一定エリア内における全頭殺処分、これを要請しておりました。しかし、当初、政府は拒否しました。そして、発生から一か月たってようやく方向転換をしました。初動段階で迅速に対策を打ち出していれば、被害の拡大防止だけでなく、財政支出も抑えられたはずであります。明らかに政治判断のミスです。
  鳩山総理、今回の口蹄疫の大量感染は、政府の認識の甘さ、危機に対する感覚の鈍さが引き起こした人災ですよ。正直な考えをお聞かせください。
  最後に、今後の対応について、鳩山総理、原口総務大臣にお伺いいたします。
  自民党は昨日、家畜の全頭処分や埋却を国の責任とし、被災農家への手当金や処分費用を国の全額負担とする口蹄疫対策緊急措置法案を衆議院に提出いたしました。家畜伝染病予防法は昭和二十六年の制定であり、現代のグローバル化、経営の大規模化には対応できません。地域再生支援のために基金を創設し、地域の実態に即した対策を柔軟に行えるようにすることが急務であります。政府・与党の皆さんには積極的に協議に応じていただき、一刻も早く感染を食い止め、殺処分した畜産農家への補償を法的に裏付けして、関係者を安心させていただきたいと思います。
  鳩山総理、我が党の提案に対して、待ったなしの状況にどう対応されますか。明確にお答えください。
  原口総務大臣には、昨日の衆議院本会議で古川代議士の質問に対して、現行法でやることはすべてやる、現行法にないものは枠を超えてやると勇ましく答弁されました。
  それでは、具体的にお伺いします。何をしてくださいますか。財源の心配はありませんか。明確な御答弁を求めます。
  このような状況下でありますが、涙の出るような有り難い話もありました。宮崎県にふるさと納税制度に基づく寄附の申出や義援金 が全国から多数寄せられていることです。全国各地から励ましの声も元気が出ます。本当に皆様方の善意が身にしみます。宮崎県民の一人として、心から厚く厚く御礼を申し上げます。
  十年前の口蹄疫も原因の特定には至りませんでした。原因が特定できないということは、不可抗力、天災と同じです。ある日突然、通常の生活が壊れてしまうのです。皆さん、これまで日本各地で幾度となく被災した地震や豪雨災害と同じではないでしょうか。今後、日本のどこで発生するか分かりません。日本の防疫の課題としてとらえることが重要です。
  冒頭にイギリスでの二〇〇一年の報告書を紹介しましたが、イギリスでは、六年後に再び発生したときにはこの教訓が見事生かされ、約一か月間で終息することに成功したそうです。二十一世紀は人類とウイルスとの闘いの世紀になると予測する学者もいます。我々は謙虚に、そして周到に備えておかなければなりません。
  私たち自由民主党は、これからも現場に足を運び、皆様たちの声を真摯にお聞きし、解決策を見出していくことをお約束します。そして、今回の口蹄疫の一刻も早い事態の終息を祈り、畜産王国宮崎の復活を誓い合いながら、私の質問を終わります。
  ありがとうございました。

■鳩山由紀夫 内閣総理大臣■

  松下議員にお答えをいたします。
  まず、中井大臣の発言についてのお尋ねでございます。
  四十九頭の種雄牛につきまして、同じ敷地内で口蹄疫が発生したことから、家畜伝染病予防法上、感染の疑いのある牛として殺処分することが必要でございます。種雄牛は県の貴重な畜産資源であると承知をしておりますけれども、多くの農家の皆様方に殺処分が前提となるワクチン接種に御協力をいただいている中で、他の農場における防疫措置を円滑に実施するためには、防疫対応を行っている地域の家畜を特別扱いすることは適当ではないと考えております。その意味で、中井大臣の口蹄疫に関する発言は誤解を招く表現があったかもしれないと思っておりますが、このような緊迫した状況の中で、口蹄疫の蔓延防止への大臣の強い思いから発したものだと受け止めております。
  農家への万全の補償についての質問でございますが、農家の皆様方にとって、大切に育ててこられた豚や牛に心ならずも殺処分を前提にワクチンを打つことや飼育途上の豚や牛を早期に出荷せざるを得なくなることは、言葉には表せないつらい話であると私も理解をいたします。
  政府として、一日でも早く口蹄疫の清浄化を成し遂げるとともに、農家への時価評価での補償やワクチン接種から殺処分までの間の飼育コストの補てんなど、農家の皆様方の補償に万全を期してまいることをお約束をいたします。
  補償に係る予算についての御質問でありますが、殺処分を余儀なくされた農家の方に対しては、時価による評価で補償を行うほか、生活支援あるいは経営再建支援など万全の対応を講ずることといたしております。これらの措置を着実に実施、実行してまいるために、予備費の活用も視野に入れて必要な財源を確保いたします。
  農林水産大臣の海外出張についてのお尋ねでありますが、赤松農水大臣は、四月三十日から五月八日までの間、メキシコなどを訪問いたし、EPAの再協議や水産資源管理の協力など当面の懸案事項について意見交換を行ったと承知をしております。この間も赤松大臣は、連日、本国の農水省と連絡を取りながら口蹄疫についての指揮を執り、例えば政府といたしましても、自衛隊の派遣など適切な措置を講じていたものだと、そのように理解をいたしているところでございます。
  口蹄疫を認識した時期でございますが、農林水産省から、四月二十日未明の発生確認直後に速やかに報告を受けております。
  政府の危機管理についてのお尋ねでございますが、口蹄疫の発生は危機管理上重大な課題であると認識をしております。したがいまして、四月二十日の発生確認直後、防疫措置の実施など迅速に対応し、現在は口蹄疫対策本部において総力を挙げて対策に取り組んでいるところ でございまして、断固たる決意を持って口蹄疫の撲滅を図ることによってその責任を果たしてまいりたいと考えております。
  自民党提出の口蹄疫対策緊急措置法案についてのお尋ねでございますが、現在、一刻も早く終息をさせるために、殺処分などの防疫措置の実施や農家への補償、さらには経営再建支援など、前例にとらわれることなく内閣の総力を懸けて取り組んでいるところでございます。なお、この立法措置に関しましては、強制殺処分などについてその必要性を認識しているところでございます。現在、各党でも議員立法が検討され提出をされていると伺っております。したがいまして、政府としても、各党とも連携を取りながらしっかりと対応してまいりたいと、そのことを申し上げておきます。
  残余の質問については、関係大臣から答弁させます。

■赤松広隆 国務大臣■

  松下議員の御質問にお答えいたします。
  私につきましては、海外出張についてのお尋ねでございました。
  私は、今総理も申し上げましたように、四月三十日から五月の八日までの間、メキシコ、キューバ及びコロンビアを訪問し、懸案の外交事案について対処してまいりました。
  メキシコでは、昨年四月以降、EPAの五年後ということで再協議を行っております。本年二月、三月と先方のマジョルガ農牧大臣が来日して、私との交渉を行ってまいりました。双方の立場は接近しつつありますが、今回私が訪問して交渉することで、鉱工業品も含めて協議全体が詰めの段階に入ったと認識をいたしております。
  キューバでは、私は、悪化する食料事情に対処して、水産、米等の技術協力につき要望を受けるとともに、両国間で懸案となっている債権問題について、カストロ議長等へ解決の道筋を付けるよう強く促してまいりました。
  その結果、おとといでございますけれども、民間長期債務の半額がキューバから日本に振り込まれました。そして、中央銀行副総裁、それから国立銀行副総裁も私の強い進言によって二十四日から日本に来て、今、日本のこうした公的及び民間債務の交渉が始まったところでございます。
  コロンビアからは、かねてからEPA交渉開始の要請がありましたが、直接ウリベ大統領等に会い、農業のセンシティビティーが確保されなければならない旨を交渉の前提として申し上げてまいりました。
  このほか、各国との間で、ワシントン条約締約国会議、CITES、捕鯨、WTO、APEC、生物多様性条約などに関し、当面する懸案事項について意見交換を行ってまいりました。
  なお、この間も私は、連日、本国の農水省と連絡を取りながら口蹄疫についての指揮を行ってきたところでございます。

■原口一博 国務大臣■

  松下議員から口蹄疫対策の今後の対応についてお尋ねがございました。
  口蹄疫の発生は危機管理上重大な問題であり、防疫対策が迅速に実施されるよう、まずは現行法の枠組みの中でできる限りの対応をする必要があると判断し、殺処分した家畜の五分の一の農家負担分について宮崎県が肩代わりをする場合には、今回の特例措置として全額を特別交付税で措置することとしたものでございます。今までは五割の措置でございました。これを十割の措置にする。しかも、特別交付税は込みで来ますから、どの部分が口蹄疫対策か分からないという宮崎県の、あるいは市町村からの御要望を受けて十二月に交付をすると、こういうことを決定したところでございます。
  また、現行法の枠を超えた対応について、地方財政を所管する大臣として、地元自治体の意見も十分にお聞きした上で、今議員がお話しになりました指定区域内の家畜の殺処分あるいは埋却あるいは疑似患畜等の処分、こういったものについても地方の負担が予想をされます。そういう負担に、地元自治体にこたえるべく、十分にお聞きした上で関係省庁に対して法的な対応も含めて検討を求めるなど、適切に対処してまいります。

委員会発言等TOPへ戻る