参議院法務委員会−

刑法等改正案(閣13号)、薬物使用者の刑の一部執行猶予法案(閣14号) 質疑
平成23年11月24日(木)
■松下新平■
  自由民主党の松下新平です。
 私は、これまで農林水産委員会、経済産業委員会、そして総務委員会に所属してまいりまして、今回新たに法務委員会に参りました。法務委員会では初めての質問となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 法務委員会といいますと、法曹関係の委員の方、専門用語のやり取り、またそれぞれの委員の方の持ち味で格式の高い質疑がなされるというのを実感をいたしました。私も数回委員会に参りまして実感すると同時に、やはり法務大臣の発言、答弁が、今日も指摘されていました、被災地の皆さんに対する誠意が足りない、また尖閣中国漁船問題に対する法務大臣のこの見解と申しますか、度々、委員からの質問に対してオウム返しのように答弁なさっている姿を見て、私は本来の平岡大臣の姿ではない、このことを同時に思った次第であります。
 法務大臣は指揮権の発動が与えられ、また、お話がありましたように、死刑執行権も与えられている。そういった意味では、閣僚の中でも大所高所からの判断が求められます。また、一目置かれる存在でなければならないのではないかなというふうにも考えております。そういった意味で、平岡大臣、臨時国会、これからまた通常国会、移りますけれども、是非、本来の平岡大臣の持ち味の答弁を期待したいと思います。
 西岡前議長もあえて異例の定例会見を開かれていらっしゃいました。民主党の御出身です。もちろん、三権の長としての立場をわきまえて判断されたと思いますが、何で議長自らああいう発言を定期的にされたか、黙認することが歴史の審判に堪えられない、そういう政治判断があったと私は解釈をしております。是非、西岡前議長が病に冒されながらも体を張って訴えてこられたこと、このことも法務大臣として是非今後の答弁につなげていただきたいというふうに冒頭お願いしたいと思います。
 それでは、本日の議題であります二法案について随時質問いたします。
 私からは、昨日、合計十項目にわたって質問通告をいたしましたけれども、午前中、刑事責任の評価が現行制度と比べて変わるおそれについて、これにつきましては重複しておりますので割愛したいと思います。また、若干重複している部分もございますが、違う角度からの質問もありますので、随時質問をしてまいりたいと思います。
 それでは、まず、過去最悪を記録している再犯者率に対する法務大臣の所感をお伺いいたします。
 我が国の再犯者率は平成九年から一貫して上昇し続けており、犯罪者全体の三割の再犯者によって約六割の犯罪が行われている状況にあります。そして、今月十一日に公表された平成二十三年版犯罪白書によりますと、昨年の再犯者率四二・七%、それと再非行少年率三一・五%は過去最悪を記録しています。また、刑務所に入るのが二回目以上となる再入者は入所者全体の五六・二%を占め、再入者のうち約二割が五度目以上の入所者となるなど深刻な累犯受刑者の実態が明らかとなっています。
 法務省は、昨年二月に再犯防止対策推進会議を設け、同年八月に中間まとめを出されるなど対応に取り組んでいるようではありますが、法務大臣としては、この再犯者率が過去最悪を更新している現状について、どのように受け止めていらっしゃるのか、お伺いいたします。
■平岡秀夫 国務大臣■
 今、松下委員の方から、いろいろな数字も挙げていただいて、再犯の状況あるいは再犯者の状況について御発言がありました。まさにそうした数字を見てまいりますと、再犯をめぐる情勢というのは大変憂慮すべき状況に依然としてあるというふうに認識をしております。
 そういう意味でも、今回の法案については、この再犯を防止していくという、そういう視点をしっかりと踏まえた法案として提出させていただいていると思っておりますので、是非真摯な御議論をお願い申し上げたいというふうに思います。
■松下新平■
 次に、一部執行猶予制度創設の意義についてお伺いいたします。
 国民が安全、安心して暮らせる社会づくりのためにも再犯防止策を積極的に推進する必要が改めて浮き彫りになっていますが、今回の法案は再犯対策として、刑務所ではなく、社会内で犯罪者の更生を図る社会内処遇に重点を置いた点で処遇の在り方を改めるものと言えます。しかし、一部執行猶予制度により、これまで全部実刑であった者の刑が一部執行猶予となり、従来の期間よりも早く釈放される可能性があるという点で被害者や国民感情としては不安を抱く可能性もあります。
 そのような国民の不安を払拭するためにも、一部執行猶予制度は、犯罪者の再犯防止、改善更生にどのような有効な制度であり、またその実効性をどのように確保するのか、法務大臣から分かりやすく御説明を願います。
■平岡秀夫 国務大臣■
 お答え申し上げます。
 まず最初に、有効性の観点でございますけれども、現行刑法では刑の言渡しの選択肢というのは、御案内のように、全部実刑か全部執行猶予のいずれかしか存在しないという状況にありますけれども、犯罪した者の再犯防止、改善更生を図るためには、施設内処遇後に十分な期間にわたって社会内処遇を実施することが有用な場合があるというふうに考えられます。
 そういう立場に立って、裁判所においては、宣告した刑期の一部を実刑とするとともに、その残りの刑期の執行を猶予することにより、施設内処遇に引き続いて必要かつ相当な期間、刑の執行猶予取消しという心理的な強制というものを付すことによって、社会内における再犯防止、改善更生を促すことを可能とすることが有効であるというふうに考えております。
 もう一点、実効性の確保という点でありますけれども、先ほど申し上げましたように、刑の執行猶予取消しによる心理的強制自体、実効性を確保するために有用であると思いますし、さらにいわゆる初入者については、初めて刑務所に入る人については、必要に応じて保護観察を付すことができるということになっておりますし、さらに薬物使用等のいわゆる累犯者については必ず保護観察を付すということとしておるところでございます。そして、保護観察付きの一部執行猶予を言い渡された場合には、先ほど言いました初入者については、保護観察の下で個々の問題性に応じた処遇を実施していくことにより対応する、さらには薬物使用等の罪の累犯者については、規制薬物等の乱用に係る犯罪的傾向を改善するための専門的処遇プログラムを受けさせるとともに、薬物依存の改善に資する医療や援助を行う機関等と連携することによりまして再犯防止、改善更生の実効性を確保することができるというふうに考えておるところでございます。
■松下新平■
 続きまして、本法案の基となる法制審答申は、刑事施設の過剰収容問題を契機とした平成十八年の諮問を受け審議、作成されたものでございます。午前中でもこのことは指摘されました。これに対して民主党内からは、刑務所の事情による法改正では大義がないと異論が出たとの報道もありました。
 実際、刑事施設の収容人員、収容率は、諮問当時に比べ下がり続けているようです。法務省としては、刑事施設の過剰収容対策という観点から今回の法案をどのように位置付けているのか、お伺いいたします。
■稲田伸夫 政府参考人■
 お答え申し上げます。
 まず、収容率といいますか、収容状況から御説明申し上げますと、最も過剰収容と言われた時期でございます平成十七年当時、刑が既に確定している既決の収容率は全国で一一六%でございました。それが昨年の段階で、これはいずれも年末の収容人員の収容率でございますが、九〇%ということでございまして、相当程度収容の状況は変わってきているのは事実でございまして、過剰収容と言われる状態はかつてに比べれば幾分緩和されているというふうには考えられます。ただ、現実問題としては、九〇%という収容率はやはりかなり高い状態でございまして、状態としては厳しいものというふうには思っております。
 そこで、先ほどのお話のございました今回の法整備との関係でございますが、平成十八年に法制審議会に諮問した際に、諮問といたしましては、被収容人員の適正化を図るとともに、犯罪者の再犯防止及び社会復帰を促進するという観点から、刑事施設に収容しないで行う処遇の在り方等についてということで諮問をしております。このように、契機といたしましては収容状況というのがあったわけでございますけれども、その解消自体を目的とするものではなくて、先ほど申し上げましたように、犯罪者の再犯防止及び社会復帰を促進すると、そのことをまず主眼に置いて、社会内処遇の在り方をも含めた対策を検討するということで行ったものでございます。また、そのようなことを実施していくことが、長期的視点に立ちますと、再犯の抑止によりまして適正収容の実現につながるものというふうに考えていたところでございます。
■松下新平■
 次に、一部執行猶予制度適用の判断要件、裁判所が適切に制度を運用するための判断材料についてお伺いいたします。
 まず、制度の判断要素として、初入者の一部猶予制度を適用する判断の要件は、法律上、三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合に、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪を防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときと定められ、薬物使用者の一部猶予制度の要件は、初入者の一部猶予制度の対象以外のものであっても、三年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けた場合においては、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内においても規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときと定められています。しかし、これらはかなり抽象的な要件であり、実際の判断の大部分は個々の裁判官の裁量に委ねられることになります。
 しかも、一部執行猶予は、宣告刑、猶予刑の刑期、猶予期間、さらに保護観察の有無まで含めれば、四つの量刑判断を行わなければならず、特に猶予刑や猶予期間の判断に当たっては個別予防的な事情の考慮が重要となります。
 このような複雑な構造と判断を要する制度について、果たして今の刑事裁判に出てくる材料のみで裁判官が適切に運用できるだろうか、判決時点で裁判官がその先まで見越した保護観察や執行猶予を判断するためには判決前調査のようなものがあった方が望ましいという意見もございますが、大臣の見解を伺います。
■平岡秀夫 国務大臣■
 まず、裁判官が適切に判断、運用できるのかという点についてでございますけれども、刑の、量刑に当たりましては二つの観点、すなわち被告人に対し刑事責任に見合った刑を科すという観点、もう一つが被告人の再犯防止、改善更生を図るという観点、これらが重要な判断要素となってくるわけでございます。刑の一部執行猶予の言渡しにおいても、これら二つの観点が重要な判断要素となって刑の量定が行われることに変わりはございません。
 他方、この一部執行猶予の判決がなされるものについて申し上げますれば、判決として三年以下の懲役、禁錮という上限が設けられておりまして、刑の執行後に社会内処遇を行うことの当否、あるいは社会内処遇のための期間というのはどの程度のものが相当かについて予測的判断が困難であるとは言えないというふうに思っております。
 さらに、手続的に申し上げれば、一部執行猶予の言渡しがなされるべきか否かが問題となる事案の審理では、検察官そして弁護人が、事案の内容に応じて、被告人の生活状況、監督者の有無やその見通しなど、関連する情状事実を主張、立証することになると考えられます。そういう下で、裁判所は必要な事実関係を基に刑の一部執行猶予をすべきか否かを判断することができるというふうに考えております。
 このようなことから、裁判所が刑の一部執行猶予を言い渡すべきか否かの判断をすることは十分に可能であり、適切に運用することができると考えているところでございます。
 判決前調査制度につきましては、一般にこの制度というのは、調査官という立場の人たちが刑の量定に関する情状を調査して裁判官に報告をする制度であるというふうに考えられておりますけれども、このような制度を導入しなくても裁判所において刑の量定をすることは十分可能と考えられます。それに加えて、我が国の刑事司法手続においては、このような制度を導入しているアメリカのように有罪、無罪の認定と刑の量定とを区別された手続で行っていないということとか、あるいは現行実務におきましては、情状の立証というのは自由な証明で足りるとされているものの、その証拠を法廷で取り調べ、当事者にどのような内容のものが調べられているかを明らかにすべきであるという程度のことは必要とされているほか、一方、当事者が不同意した書証について、自由な証明であるという理由のみでこれを採用し取り調べることは必ずしも実務上行われていないといったようなことなどを踏まえますと、現行の刑事訴訟法、刑事手続等との関係で調整を要する問題点が少なからずあるというふうに考えております。
 そういう視点からは、判決前調査制度の導入については慎重な検討が必要であるというふうに考えているところでございます。
■松下新平■
 様々な意見も寄せられていますので、そこら辺も踏まえて運用に当たっていただきたいと思います。
 続きまして、裁判所の適切な判断に資するため、あらかじめ施設内や社会内でどのような改善指導や処遇プログラムが適用されているのか。また、一部猶予制度を使ってどのような社会内処遇が見込まれるかといった情報が矯正や更生保護の側から提供される必要があると考えますが、どのような検討がなされているのでしょうか。法制審の部会では、事務当局から、一部猶予制度が実施されることになれば、処遇内容の策定あるいは実施に当たって必要な体制、準備が整った段階で裁判所に説明し、協議させていただきたい旨の発言がなされていますが、検討はどのようになっているでしょうか。
■青沼隆之 政府参考人■
 お答えいたします。
 刑の言渡しを行う裁判所の適切な判断に資するためには、矯正施設内あるいは社会内の処遇の実情に関する情報を提供して十分な理解を得ることが肝要であるというふうに認識しております。
 保護観察所におきましては、平素から裁判所と定期的に協議会などを開催するなどして、新しく開発した処遇プログラムの内容などを含めまして、更生保護制度に関する情報を実際に提供いたしております。今回の一部猶予制度の導入に当たりましても、矯正施設も交えて裁判所と協議の機会を持つことによって、あらかじめ裁判所に対し必要な情報を提供するよう全国の保護観察所に指示することを考えております。
■松下新平■
 次に、社会貢献活動の導入の意義と法的性格についてお伺いいたします。
 今回、新しく導入が検討されています社会貢献活動は、保護観察対象者を社会に貢献させる活動に従事させ、自らが社会に役立つ活動を行ったとの達成感を得させたり地域住民等から感謝されることなどを通じ自己有用感を得させるなどして改善更生の意欲を向上させること等を趣旨とし、現在も同様の趣旨で保護観察所の中で任意に行われています社会参加活動を新たに更生保護法の特別遵守事項として規律するようなものだと承知しております。
 しかし、法制審の部会では、この社会参加活動については対象者の改善更生にどの程度の効果があるのかについて具体的な検証が行われていないとの報告がなされていました。また、諸外国における類似の制度である社会奉仕活動も、当該活動を義務付けたものの再犯率は有意的な差異が認められなかったという研究結果も報告されていました。これは部会で報告されていました。
 そこで、社会貢献活動を更生保護法の特別遵守事項として定める以上、違反すれば制裁措置を伴うので、事前に再犯防止の有効性に関する実証研究が行われた上で法案提出がなされるべきと考えますが、法務省はこの実証研究を行ったのでしょうか。御説明をお願いいたします。
■青沼隆之 政府参考人■
 お答えいたします。
 我が国では、本年度から社会貢献活動の先行実施を開始したばかりでございまして、再犯防止の有効性については今後検証していくということになりますけれども、諸外国の類似の制度に関する検証結果に鑑みますと、社会貢献活動による再犯防止効果はあるというふうに考えております。
 諸外国の例として、イギリスと韓国における検証結果について若干御説明申し上げますと、英国では、無償の貢献活動、アンペイドワークというものを裁判所が命令することができるということになっておりますが、いわゆる指導監督のみを科した群と指導監督とプラスしてアンペイドワークの双方を科した群とを比較いたしますと、両方を科した群の方が再犯率が低くなっているというふうな結果になっております。また、韓国におきましても、同様、社会奉仕命令を履行した者の再犯率は保護観察対象者全体の再犯率よりも低いという結果が出ております。
 ちなみに、現在行われております、我が国で行われております社会参加活動の実証のデータということになりますけれども、これは主に少年について実施している関係で、再犯率ということについてはなかなか難しゅうございます。
 そういう中で、一つの根拠となっておりますのは、保護観察をやりますと、成績が良好の場合には優良ということで保護観察を終了するということがあるんでございますが、その終了の率が保護観察処分全体の率よりも社会参加活動を行った少年に対する率の方が高いという結果が出ております。
■松下新平■
 諸外国の例を参考にするのはいいと思うんですけれども、我が国もそれぞれの歴史、事情も違いますので、そこら辺の研究もしっかり行っていただきたいと思います。
 次に、社会貢献活動の具体的な活動内容についてお伺いいたします。
 まず、社会貢献活動は地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動、これを行うものとされていますが、これは具体的にどのような活動を想定しているのでしょうか。また、社会貢献活動を保護観察の特別遵守事項の一環として義務付ける場合、対象者の改善更生のために特に必要な場合に付されるので、対象者の罪種と活動の内容の結び付きが必要になってくると思われますが、この点はどのような検討がなされているのでしょうか。お伺いいたします。
■青沼隆之 政府参考人■
 お答え申し上げます。
 具体的な活動の内容につきましては、午前中の審議の中でも御説明申し上げましたとおり、活動が行われる各地域の実情に応じて様々なものがあると考えられますけれども、例えば公共の場所での清掃活動、落書き消し、あるいは福祉施設における介護の補助活動、公園の緑化活動等が考えられております。
 また、社会貢献活動を行わせることが適当な対象者といたしましては、善良な社会の一員としての意識の涵養が必要な者として、例えば暴走族に加入して道路交通法違反を行った者、それから不良集団での万引きですとか自販機荒らしなどを行った者などが考えられております。また、規範意識の向上が必要な者としては、道交法違反や大麻所持を繰り返した者等が想定されております。
 今後、特定の罪種を含め、どういった対象者にどのような活動を行わせるのが適当かについて、本年度から開始した先行実施の中で検証を重ねまして、罪種とのマッチングについても検討してまいりたいと思っております。
■松下新平■
 続きまして、社会貢献活動に福祉施設での介護活動を加えることの当否についてお伺いいたします。
 現在、任意で行われています社会参加活動では高齢者等に対する介護奉仕活動が最も多く行われており、これは全体の三〇・九%だそうですけれども、社会貢献活動でも当該活動が多く行われることになると推測されますが、一方で、福祉関係者からは、介護は専門的な知識と技術が求められており、そのような仕事に保護観察の条件として活動を担わせるのは、介護職の自信と誇りをそぎ、国民にも誤解を与えかねない、このようなことが言われておりまして、福祉施設における介護活動を活動内容に加えることに反対する意見もあります。現場の福祉職員の方々は、必ずしも十分でない就労条件の中で、要介護者の尊厳を守り、自立を支援するために誇りを持って働いていらっしゃるわけで、社会貢献活動イコール介護活動というレッテルが世間に根付いてしまうことになれば彼らの職業意識を傷つけることにもなりかねません。
 そこで、このような意見について法務大臣はどのような見解をお持ちか、伺います。また、もし社会貢献活動に介護活動を加える場合には、福祉施設の利用者の安全、福祉職員の職場環境や職業意識、福祉施設の地域社会における立場等についてどのような配慮をしていくおつもりなのか、併せてお伺いいたします。
■平岡秀夫 国務大臣■
 今委員が御指摘になりましたように、社会貢献活動の中で介護活動といったような点についての御指摘がある点は我々も承知しているところでございます。
 ただ、我々としては、社会貢献活動というのは特別遵守事項として義務付けていくものであるということを考えますと、介護のような専門的知識、技術を習得しなければ従事できないといったような分野のものについては活動分野として適当ではないというふうに思っています。
 そういう考え方に立ちますと、介護に従事している職員の方々が行っているような介護活動の本質的な部分というものをこの保護観察対象者に行わせるということを考えているわけではなくて、介護活動の補助的な活動、例えば車椅子介助の補助といったようなことは現在でも一般にボランティアによる活動支援が行われているということだというふうに承知しておりまして、そういった分野においての活動というものを社会貢献活動として考えているということでございます。
 是非、この社会貢献活動の実施に当たりましては、福祉施設関係者の皆さんにもその意義を十分に説明し、御理解をしていただけるように我々としても努めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
 さらに、福祉施設利用者の安全等の確保についてでございますけれども、こうした社会貢献活動を福祉施設等において実施するに当たりましては、保護司の皆さんの協力も得ながら保護観察官が監督するということによって体制を整備し、事故の発生を未然に防止することが重要であるというふうに思っておりますし、万が一という事態もあり得ないわけではないと思いますけれども、そういうことに対しても対応できるように、福祉施設利用者等に損害を与えるようなことについての保険、何らかの保険に加入させるなどの方策も取ってまいりたいというふうに考えております。
■松下新平■
 配慮をよろしくお願いいたします。
 次に、社会貢献活動場所の確保についてお伺いいたします。
 社会貢献活動が対象者の改善更生、再犯防止に役立つものとして機能していくためには幅広い種類の活動場所を確保する必要がありますが、現在の活動場所の確保状況はどのようになっているのでしょうか。さらに、これまで刑務所外で犯罪者を処遇する経験がほとんどない我が国では、活動場所を広げていくのは困難も多いと思われますが、受入れ機関やその利用者、地域住民に不安を与えない仕組みづくりについてはどのように考えているのか、お伺いいたします。
■青沼隆之 政府参考人■
 お答えいたします。
 まず、活動場所の確保についてでございますけれども、平成二十三年、本年の十月末現在において二百三十二か所の活動場所を確保している状況にございます。
 次に、受入れ機関ですとか地域住民に不安を与えない仕組みづくりについて申し上げますと、御指摘のように、この活動をスムーズに実施するためには受入れ機関や地域住民に不安を与えないようにすることが極めて重要だと考えております。
 そこで、まず一点目として、先ほど大臣の方からも御答弁ありましたとおり、事故の発生を未然に防止するということがまず第一でございますので、そのために監督に当たる保護観察官あるいは保護司さんを始めとする人たちに対して体系的、効果的な安全研修をすることを考えております。また、万が一の事態に備えて保険等の加入も考えているところでございます。
 それから、活動先に対して社会貢献活動の趣旨や意義などについて丁寧な説明をするとともに、定期的な協議の機会をすることも考えておりまして、これらを通じて地域の関係者や住民の不安を解消して、その理解と協力を得られるよう努めてまいりたいと考えております。
■松下新平■
 次に、社会貢献活動の監督体制についてお伺いいたします。
 諸外国の社会奉仕命令制度では、刑罰としてではなく保護観察の条件として課せられる場合でも、社会奉仕が社会内においてスムーズに履行されるためには対象者の住所及び行動の把握が不可欠であるため、その活動の監督が最も困難かつ負担の重い作業と言われています。特に韓国では、保護観察所が活動の企画だけではなく全ての監督も行っているので、保護観察官に重い負担が掛かっているようです。また、アメリカ、イギリス、フランスなどは行動把握の一手段として電子監視も積極的に活用されています。
 これに対し、保護観察官の絶対数が少なく、また、電子監視の活用も困難な状況の日本ではどのような監督体制を構築していくつもりなのか、このことについてお伺いしたいと思います。
■青沼隆之 政府参考人■
 お答えいたします。
 社会貢献活動は特別遵守事項によりまして義務付けるということで行わせるということになりますので、対象者が適切に活動に従事しているかどうかの監督、確認、その他活動の全般の管理につきましては保護観察官が行うことになります。そのほか、活動の場所ごとに指名された社会貢献活動担当の保護司さんの協力を得ながら行っていくということを想定しております。
■松下新平■
 午前中の質疑でもありましたけれども、保護司に協力、監督を要請するということですけれども、ただでさえ通常の保護観察業務の大部分を背負っている保護司の皆さんですから、これ以上負担を掛けられるかどうか、このことも慎重に検討していただきたいと思います。
 最後に、一部猶予制度、社会貢献活動の実施に当たり保護観察の人員体制を強化する必要性についてお伺いいたします。
 一部執行猶予制度の導入に伴い、保護観察に付されている対象者の増加が予想され、また、社会貢献活動の実施においては、監督、サポートのための人員確保が求められています。これに伴い、保護観察官や保護司の役割も一層重要になるため、これらの増員、適任者確保に一層の尽力を注ぐ必要があると考えますが、来年度予算に向けてどのような措置を講ずるつもりなのか、また、予算獲得に向けた大臣の意気込みについても併せてお伺いいたします。
■平岡秀夫 国務大臣■
 今、委員が御指摘のように、今回のこの刑の一部の執行猶予制度が導入された場合には、薬物事犯者を中心に保護観察対象者が増加することが見込まれております。そのほか、社会貢献活動の実施あるいは関係機関との連携ということで活動先の確保にも取り組んでいくということでございますので、保護観察官については仕事が大変増えてしまうという、そういう状況も我々としては覚悟しなければいけない、このように今思っております。
 そういう中で、今回の法案については、先ほど来から申し上げておりますように、一部執行猶予制度については三年以内の施行、そして、社会貢献活動の導入については二年以内の施行ということでございます。成立後、その施行までの間に、関係機関や団体等とより一層緊密な連携を確保しながら、薬物依存のある保護観察対象者の増加や社会貢献活動の実施に伴う保護観察官の業務負担の状況も踏まえ、保護観察の実施体制の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。
 ちなみに、保護観察官の増員の状況でございますけれども、平成二十三年度、今年度におきましては、現行法の枠内で社会貢献活動を実施するということで、先行実施、試行しているところがありますけれども、そういうことにも対応するということで、保護観察官六十三人の増員をしております。ただ、合理化減というのが二十九人ほどありますものですから、それを差し引きますと、純増としては三十四人の増ということでございます。
 さらに、平成二十四年度概算要求においても、薬物依存のある刑務所出所者等に対する再犯防止対策の強化ということで、保護観察官六十二人の増員を要求しているところでございますけれども、御案内のように大変厳しい財政事情あるいは定員事情にございますので、なかなか私たちの力では十分に確保できないという点もあろうかと思います。
 是非、委員会の先生方におかれても、御理解と御支援を賜るようにお願い申し上げたいと思います。私たちとしても、全力を尽くして増員確保に努めてまいりたいと、このように思っております。
■松下新平■

 先ほど森委員からも被災地の状況のお話もありましたけれども、そういった被災地の配慮もお願いしたいと思います。
 本日は、二法案につきまして、参議院先議ということで質疑をさせていただきました。特に法務委員会所管の法律につきましては、立法趣旨、これをこの委員会で明らかにすることが重要だということの御指導も受けて、あえて今日はそういった観点から質問をして答弁をいただきました。まだまだ研究、そして配慮に対しては定まっていない部分もございます。これから実施に向けてしっかりとした執行体制をつくっていただきたいと思います。
 予定しておりました質問が全て終了しましたので、若干早いんですけれども、以上で私の質問を終わります。
ありがとうございました。