経済産業委員会−

−特許法の一部を改正する法律案について−
平成20年4月10日(木)
○通常実施権等登録制度見直しの意義について
○特許・商標関係料金引き下げの趣旨と今後の特許行政の基本的方向性について
■松下新平■
 どうもお疲れさまです。無所属の松下新平です。
 早速ですけれども、本日の議題であります特許法等の一部を改正する法律案につきまして、私は、近年顕著となっております知的財産をめぐる世界的な環境変化の観点から質問をさせていただきます。
 近代特許制度は中世ベニスで誕生し、一四七四年に公布されました発明者条例が世界最古の成文特許法であると言われております。さらに、一六二四年には英国におきまして専売条例が成文特許法として制定され、これにより今日に至る特許制度の基本的な考え方が明確化されたものと認識しております。
 また、我が国におきましては、御案内のとおり、高橋是清公のリーダーシップの下に、一八八五年、明治十八年でありますけれども、専売特許条例が制定され、これが我が国における産業財産権制度の端緒となったわけでございます。
 以来、こうした特許制度がイノベーションを支える基盤となっておりまして、様々な発明が繰り返されてきたところで、我々人類の生活を一層豊かなものにしてくれております。
 しかしながら、こうした特許を始めとする知的財産をめぐる環境が近年大きく変化してきているのも事実でございます。特に近年におきましては、市場ニーズの変化がますます加速化して製品のライフサイクルが一段と短くなってきておりまして、様々な産業において競争環境が一層厳しくなる中、企業がイノベーションの効率性を上げ競争力を強化していくためには、外部の知識や技術を有効に活用した取組を推進することが重要となってきており、米国におきましては、情報通信産業を始め一般消費財産業、化学産業等の様々な業種でこうした取組が進展しているとされております。
 他方、我が国企業は、一般的には物づくり精神の気質や自社開発志向が強いとされており、業種や個々の企業で差はあるものの、内部リソースを用いてイノベーションを実現しようとする、いわゆるクローズドモデルの知的戦略にウエートを置いている場合が多く、米国と比較してオープンイノベーションに向けた取組が十分ではないと言われております。
 しかしながら、経済のグローバル化が進展する中で我が国企業も、競争環境の激化や製品サイクルの短縮化、研究開発投資の大型化などの状況に直面しており、今後は、自ら独自の知的財産を創造し独占的に利用するクローズドモデルの知的戦略と、外部リソースを積極的に活用したオープンモデルの知財戦略をバランスよくマッチングさせながら各企業の知財戦略を展開することがますます重要なものとなってくると考えられます。
 本日の議題におきましては、知的財産権の戦略的な活用を促進する観点から通常実施権等に係る登録制度の見直しを行うこととされており、特許権等の活用を一層推進するための環境整備を行うものとして、まさにオープンイノベーション時代の社会的ニーズを的確にとらえた法律改正だと認識しております。
 そこで、中野副大臣にお伺いいたします。
 通常実施権等登録制度の見直しの二つの柱であります特許の出願段階におけるライセンスに係る登録制度の創設及び現行の通常実施権登録制度の活用に向けた見直しを行うことにより、どのようにして知的財産権の戦略的な活用が促進されることになるのでしょうか。通常実施権等登録制度に係る制度改正の趣旨、意義、それをいま一度お聞かせいただきたいと思います。
■中野 正志 経済産業副大臣■
 松下委員の御指摘のとおりであります。
 近年、技術が高度化、複雑化して製品のライフサイクルが短縮化する中で、企業が自社の研究開発を加速化して競争力を強化するためには、やはりオープンイノベーション戦略が重要となってきております。
 そのような中で今回の通常実施権等の登録制度の改正ということは、国境を越えた企業再編の活発化等に伴う産業財産権の移転の増加、そして、企業におけるライセンスの拡大の進展を踏まえて、企業等がライセンスに基づく事業活動を安定して継続できる環境を推進していこう、そういうことを図っております。とりわけ大学TLOです。いわゆる産学の技術移転機関ということでありますけれども、そういったTLOや中小ベンチャー企業などでの活用ニーズの強い特許の出願段階における発明についてライセンスを保護する、その制度を創設することによって、発明のより早期の活用に資する制度を整備することといたしております。
 こういった制度改正によりまして、委員がおっしゃられましたように、それぞれの企業等の戦略に応じた発明の活用を幅広く促進することでオープンイノベーションをより一層活発にすることができる、そして知的創造サイクルの更なる加速化にもつながるものだというふうに考えておるところであります。一生懸命推進をいたしてまいります。
■松下新平■
 ありがとうございます。
 次に、甘利大臣にお尋ねいたします。
 今回の法律改正におきましては、特許・商標関係料金も引き下げることとされております。特許関係料金においては平均一二%、また商標関係料金におきましては平均四三%の引下げを行うこととされております。
 経済のグローバル化が進展し、また昨今の円の高騰、企業における競争環境が一層厳しくなる中、企業の知財活動費に掛かる負担を軽減し、研究開発費回収のため料金面から権利を相当期間保有できるような環境を整備することは非常に重要だと認識しております。しかしながら、私は、このような料金の引下げを前提としてもなお、社会的ニーズを的確にとらえながら、引き続き特許制度を安定的に運営していただきたいと思うわけでございます。
 平成二十年度の特許庁の予算の概要を見れば、先行技術調査外注の拡大や業務・システム最適化などの世界最高水準の迅速的確な特許審査の実現に向けた取組など、非常に多岐にわたる取組が掲げられており、社会的ニーズを的確にとらえたきめの細かい施策が展開されているものと認識しております。
 先ほども申し上げましたとおり、経済のグローバル化や技術の高度化、複雑化を背景として、知的財産をめぐる環境は近年世界的に変化しております。こうした知的財産をめぐる世界的な環境変化を受けて、昨今では様々な課題も出現してきているわけであり、我が国におきましては、こうした課題に適切に対処する形で知的財産制度を一層強化していく必要があると認識しておりますが、今般の特許・商標関係料金の引下げとの関係はどのようにお考えなのでしょうか。特許・商標関係料金引下げの趣旨と、近年の知的財産をめぐる世界的な環境変化にどのように対処していくのか、今後の特許行政の基本的な方向性について甘利大臣の決意をお伺いいたします。
■甘利 明 経済産業大臣■
 中小企業の利用割合が高い商標に関する費用であるとか、十年目以降の特許料等を引き下げるということは中小企業からのニーズが高いということを認識をいたしております。今回の料金引下げというのは、まさに中小企業のニーズにこたえるものであると考えています。
 それから、経済のグローバル化であるとか技術の高度化、複雑化というのが進展をしまして、知財をめぐる環境は大きく変化をしてきております。この環境変化に対応した知財システムを構築するということが喫緊の課題でありまして、具体的に申し上げますと、世界の特許出願件数の急増に対応した特許審査の迅速化など、持続可能な世界特許システムの実現、そして、オープンイノベーションの進展に対応したイノベーション促進のためのインフラ整備、さらに、特許をめぐる企業間競争やビジネスリスクの増大に対応した特許の質の向上、予見性の高い知財システムの整備、そして新しい技術や社会の動向等に対応した的確な保護を進めていくことが必要だというふうに考えております。
 経済産業省といたしまして、こうした環境変化に適切に対応しながら、イノベーション促進のための知財システム構築に向けた取組を引き続き推進をしてまいります。
■松下新平■
 今日の午前中の審議でも、世界に冠たる特許制度ということで高い評価をする意見がたくさん出ましたけれども、私からも、関係各位の御尽力に敬意を表し、更なる充実に向けて祈念して、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。